核廃棄物の全容を知るために 特別レポート「核廃棄物管理・処分政策のあり方」〔原子力市民委員会〕

核廃棄物の全容を知るために 特別レポート「核廃棄物管理・処分政策のあり方」〔原子力市民委員会〕

「増え続ける汚染水」
「指定廃棄物の処分場に住民は反対」
「使用済み核燃料プールの余裕わずか」
「高レベル廃棄物処分の適地探し」
「中間貯蔵施設の整備難航」……。

原子力発電が生み出す核廃棄物は、発生源や汚染レベル、固体や液体といった状態によって呼び名が細かく区分されています。それぞれの問題だけで議論されがちで、よほど詳しい人以外には問題の全貌を掴むのが難しくなっていました。東京電力福島第一原発事故後は、むき出しになったままの膨大な廃棄物が増え続けており、問題を一層複雑にしています。そこで原子力市民委員会は、核廃棄物を統合的にとらえて解決策を提言した特別レポート「核廃棄物管理・処分政策のあり方」をまとめました。今後どんなエネルギー政策を選んだとしても、この問題は避けて通れません。

20151226_CCNE5 核廃棄物は、東電福島事故に由来する事故廃棄物と従来からの核廃棄物に大きく分類されます(右図)。事故廃棄物には、原子炉の中心部が溶け落ちて固まった核燃料デブリ、汚染されたガレキや建屋、敷地の外に放出された放射性物質、除染で生ずる廃棄物があります。たとえ事故がまったく起きなかったとしても、ウラン鉱山廃棄物、低レベル廃棄物、使用済み核燃料、再処理によって生じる放射能のきわめて高い廃棄物などを生じます。これらの廃棄物のほとんどについて必要な対処や管理・処分が進んでいません。

たとえば事故廃棄物では、核燃料デブリはプラントのどこに、どんな形でどのくらいあるのかさえ正確につかめていません。それに由来する高濃度汚染水の増加も食い止められていません。除染廃棄物は膨大な量のフレキシブル・コンテナバッグ(フレコンバッグ)の形で野ざらしのままとなっており、昨年の豪雨で一部流出するなど、管理が十分でないことを物語っています。

従来型の廃棄物で焦点となっていた高レベル廃棄物は、自治体からの公募方式から、政府が科学的有望地を示して自治体に協力を申し入れる形に処分方針を昨年改定し、政府の取り組みを強化しました。しかし再稼働のための応急的な蓋にしか見えません。

このレポートでは管理を急ぐべき課題を洗い出し、以下の優先順位で対処することを設定し、具体的な政策提言をしています。

(1)東電福島原発事故廃棄物
(2)未固化の高レベル廃液や放熱量の大きい使用済み核燃料など、安全管理上の問題を抱えている従来型の核廃棄物
(3)それ以外の核廃棄物

原子力発電をすでに半世紀余りつかってきた現在、原発政策のつけ、電力会社の怠慢無策がとてもよくあらわれているのが廃棄物政策です。被曝や環境汚染、国民負担を最小化するという技術的な原則だけでなく、責任と負担をどう考えるか、市民参加のもとで丁寧に合意形成を目指していく必要があります。原子力市民委員会は、このレポートをもとに、さまざまな立場のみなさんと冷静な議論を深めていきたいと考えています。

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原子力市民委員会 核廃棄物問題プロジェクトチーム
特別レポート「核廃棄物管理・処分政策のあり方」