「原発ゼロ社会への道」 -原子力市民委員会のブログ-

予測不能の熊本地震:川内原発を停止し、推移を見守るべき〔立石 雅昭〕

予測不能の熊本地震:川内原発を停止し、推移を見守るべき〔立石 雅昭〕


 4月14日に始まった熊本・大分地震は震度7に達する激震が2度観測されるとともに、震度5弱以上の強震・烈震が15回を数えるという、地震国日本でも前例のない地震となっている。これらの地震は当初、熊本県南西部の布田川・日奈久(ふたがわ・ひなぐ)断層帯の交差部付近で発生したが、16日午前中には北東の別府-万年山(はねやま)断層帯でM5.3、19日には日奈久断層帯の中部にあたる地域でM5とM5.5の地震が発生した。今回の地震の最大の特徴は、これまで厚い火山噴出物に覆われて活断層が認められていなかった阿蘇山の北部も含めて、中部九州の広い範囲を震源とする地震が次々に発生しており、なおかつ、震度5弱以上の規模の大きな地震動が相次ぎ、過去の地震をはるかにしのぐ多数の地震が発生していることである。

 地震がさらに南西の鹿児島県川内原発周辺の活断層や、東の愛媛県伊方原発に近接する中央構造線断層帯で発生する可能性も危惧される。原発は、稼働中と停止中ではそのリスクに大きな差があることからすれば、国内で唯一稼働している川内原発は直ちに停止し、少なくとも熊本・大分地震の推移を見守るべきである。

政府 地震調査研究推進本部「九州地域(評価対象地域)において評価対象とする活断層の分布」2013年2月1日 4月14日のM6.5、最大震度7を記録した前震は、日奈久(ひなぐ)断層帯の高野-白旗区間の約18㎞の断層が動き、震央距離11㎞の強震観測網(KiK-net)益城(ましき)の地表での地震計で最大加速度1580ガル、最大速度92カインが記録されている。地下252mの地震基盤(S波速度2700m/s)上の地震計では3成分合成でおよそ260ガルの加速度が観測されている。これを解放基盤表面に換算すると、およそその倍の520ガルとなる。16日未明に熊本を襲ったM7.3、最大震度7の本震は、布田川(ふたがわ)断層帯の布田川区間から宇土区間にかけての長さ27㎞、幅12㎞の断層が動いた。この時、観測された地表での最大加速度は、KiK-net益城(震央距離2㎞)で、1362ガル(水平・垂直の三成分合成値)である。これらの前震・本震の揺れは1995年の兵庫県南部地震を大きく上回っている。

 川内原発の近傍には、いずれもM7.0からM7.5の地震を発生しうる出水断層帯・市来断層帯・甑(こしき)断層帯が分布している。原子力規制委員会は18日に委員会を開き、それまでの熊本地震による川内原発での地震動や新規制基準適合審査での日奈久断層帯などの影響評価をもとに、川内原発稼働継続を承認した。しかし、この判断は、今回の地震に関する上記の特徴を踏まえて安全性を確認したものではない。規模の大きな地震が発生した際、周辺の活断層が誘発され、川内原発近傍に震源が移動する可能性や、数度にわたる規模の大きな地震に伴う構造物の破壊の事象なども検討されてない。原子力規制委員会の判断は住民や国民の危惧を無視したものであり、安全性を科学的に検証したものとは言えない。ここに、改めて川内原発の稼働停止を求める。

 画像(1)
   以下より取得した画像に原子力市民委員会事務局にて加筆。
    産業技術総合研究所 地質調査総合センター「九州地域の活断層と震央分布(地質図Navi)」
    https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/kumamoto2016/index.html
    2016年熊本自身の震源分布[防災科研Hi-net地震観測システムの自動処理結果による]データ取得期間2016/4/14 21:26~2016/4/28 09:00

 画像(2)
   政府 地震調査研究推進本部
   「九州地域(評価対象地域)において評価対象とする活断層の分布」2013年2月1日
   http://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/regional_evaluation/kyushu-detail/

About author

立石 雅昭
立石 雅昭

1945年生まれ。専門は地質学。京都大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士、新潟大学名誉教授。新潟県「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」委員、「地震、地質・地盤に関する小委員会」委員。著書に、『地震列島日本の原発―柏崎刈羽と福島事故の教訓』(東洋書店、2015年)、『川内原発を巨大地震が襲う』(川内原発活断層研究会との共著、南方新社、2013年)など。原子力市民委員会アドバイザー。