「原発ゼロ社会への道」 -原子力市民委員会のブログ-

伊方原発の再稼働への疑問 ―原子力市民委員会との対話を拒否した愛媛県― 〔原子力市民委員会〕

伊方原発の再稼働への疑問 ―原子力市民委員会との対話を拒否した愛媛県― 〔原子力市民委員会〕


 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、今年4月に発生した熊本地震の震源域の延長上にあります。マグニチュード8クラスの地震を起こす中央構造線断層帯がすぐ近くを通っていることから、あらためて安全性への不安が高まっています。そんな状況のもと、四電は6月24日から伊方原発3号機に核燃料を入れ始めました。7月下旬には制御棒を引き抜いて原子炉を起動する予定と報道されています。

 原子力規制委員会は昨年7月に伊方3号機について「新規制基準を満たす」と判断しました。また地元の愛媛県が設置した「伊方原子力発電所環境安全管理委員会原子力安全専門部会」(原子力安全専門部会)が昨年8月にまとめた報告書※1も、規制委の審査結果を「妥当なものと判断する」としています。

 自治体が独自に専門家の委員会を設置して政府・電力の主張をチェックするのは良いことですし、その一点において愛媛県の姿勢は評価できます。新潟県や福井県もそのような仕組みを整備しています。しかし原子力推進の立場の専門家でメンバーを固め、批判的意見をもつ専門家を排除したのでは、政府・電力に追従する結論しか出てきません。実際、専門部会の報告書を精査してみると、肝心の諸点において規制委員会のあいまいな回答を丸ごと承諾していることが見て取れます。

 たとえば同部会が規制委員会に宛てた質問の冒頭には「安全目標」(規制委員会が2013年4月に設定したもので、福島原発事故の100分の1程度の放射能放出リスクを、100万炉年に1回に抑えるという目標)の意味について説明を求めていますが、規制委員会は「今後とも引き続き検討を進めていく予定」、「達成を目指す目標」とあいまいに回答し、専門部会もそれに文句を付けていません。規制委員会の新規制基準やそれにもとづく安全審査(適合性審査)が果たしてこの安全目標に見合っているのかという最も重要な急所についても判断を避けています。

 昨年末、原子力市民委員会が愛媛県知事の中村時広氏と、専門部会部会長の望月輝一氏に対して、「専門部会報告書についての意見交換のお願い」という書状を送付し、その中で新規制基準とその運用、および専門部会報告書について、専門家集団としての立場から多くの重大な問題点を指摘し、意見交換を求めました。

 ところが愛媛県の事務局の電話での回答(県庁内でしかるべき決済を踏んでいるとのことです)は「原子力安全専門部会は、伊方原発の安全対策について、中立的立場で、科学的に評価する立場にありますので、直接、原発に対して、賛成や反対の立場の団体と、意見交換会をするのは、差し控えさせていただきます。」というものでした。

 専門部会メンバーが、原子力発電の推進の是非について、中立的立場でないことは明らかです。それでも異なる意見の専門家グループとの「意見交換」すら拒否するというのは、独善的と言わざるを得ません。

 伊方3号機の再稼働の前提となっている新規制基準や、愛媛県の原子力安全専門部会の判断に重大な疑問が多々あるなかで、再稼働を進めるべきではありません。原子力市民委員会は、熊本地震を受けて新規制基準を全面的に見直すべきであるとする声明※2を発表しています。この中で伊方3号機に対する設置変更許可も凍結し、見直した新たな規制基準のもとで必要な審査をやり直すべきだと訴えています。
 


※1 伊方3号機の新規制基準への適合性審査に関する原子力安全専門部会報告書平成27年8月
   http://www.ensc.jp/pc/user/HOUDOU/h27/o270902/houkokusyo.pdf
※2 原子力市民委員会「声明:熊本地震を教訓に原子力規制委員会は新規制基準を全面的に見直すべきである」2016年5 月17 日
   http://www.ccnejapan.com/?p=6794

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脱原発社会の構築のための情報収集、分析および政策提言を行うとともに、幅広い意見を持つ人々による議論の「場」を提供することを目的とした市民シンクタンク。2013年から約60名のメンバー(研究者、技術者、弁護士、経営者、教育者、NGO/NPO職員など)で活動しています。http://www.ccnejapan.com/