「原発立地地域から原発ゼロ地域への転換」特別レポート発行〔原子力市民委員会〕

「原発立地地域から原発ゼロ地域への転換」特別レポート発行〔原子力市民委員会〕

 脱原発に方針転換するには、政府や電力会社だけでなく、原発立地地域が自ら舵を切ることが期待されています。原子力市民委員会は4月20日、特別レポート4「原発立地地域から原発ゼロ地域への転換」を発表しました。なぜ立地地域が脱原発に転換すべきなのか、原発をゼロにすることによる地域経済や自治体財政への影響はどの程度なのかを分析し、転換するための基本的な考え方や必要な方策を提言しました。3章47ページとコンパクトにまとめた処方箋です。

 第1章は「なぜ地域脱原発を進めるのか」。脱原発の必要性を、リスクや経済の観点からおさらいし、国レベルだけでなく、脱原発は立地地域・周辺地域の住民にも利益となることを示しています。

 第2章は「原発立地自治体の経済・財政の実態」。10基の原発が集中する福井県の立地4市町を中心に、再稼働しなければ本当に立地自治体の産業や財政が成り立たないのかを検証しました。野村総合研究所等のデータを用いた産業連関分析や地元の商工会議所による調査などをもとにしています。原発に依存する度合いの高い企業は一部でしかなく、局所的な手当てをすれば原発の廃止による地域経済への影響は緩和できることがわかりました。

 また財政の面からも、原発関連収入が無くなっても他の自治体と同等の住民サービスをおこなうための財源は確保されることや、政府の新たな財政措置に頼らなくとも財政再建が可能であることを明らかにしています。

 第3章は「原発ゼロ地域への転換政策」。日本よりひと足早く脱原発に転換したドイツの原発立地地域の状況を紹介しています。1990年に閉鎖された旧東独のグライフスバルト原発では、全長1.2キロの巨大タービン建屋が、内部の機器や配管を撤去したのち、洋上風力発電設備の製造工場に生まれ変わりました。海に近い立地を生かして、製造した風力設備は船で欧州各地に出荷されています。

 立地地域で原発に大きく依存している企業は、保守や検査を請け負っていたサービス業や安全対策事業を担っていた建設業です。これらの業種は、再生可能エネルギーの領域でも活躍できます。発電機の開発やコンサルタント、施工、事業運営などは地域企業が参入可能です。たとえば小水力発電と風力発電の設置工事では地元の建設業が持つ技術やノウハウを活かすことができます。

 原発と長年の「共生」によって立地自治体が抱え込んだ「負の遺産」は何か。それを克服するために、政府がどのような支援を提供すれば、立地自治体は原発ゼロに取り組みやすくなり、円滑に転換が進むのか。現実に即して具体的に考え、議論するために必読のレポートです。


原子力市民委員会 特別レポート4「原発立地地域から原発ゼロ地域への転換」
http://www.ccnejapan.com/?p=7581