川内原発を再稼働させてはいけない3つの理由 〔原子力市民委員会〕

川内原発を再稼働させてはいけない3つの理由 〔原子力市民委員会〕

 川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を、九州電力が8月11日に再稼働させる。計画通りなら2013年9月に関西電力大飯原発3・4号機が停止して以来、国内では約2年ぶりの原発運転再開になり、新規制基準の下で初の運転となる。しかし安全性について住民や市民団体や憂慮する技術者らからの意見は反映されておらず、数多くの課題が残されている。

 第1は、防災計画・避難計画の不備である。過酷事故を想定した計画を、鹿児島県や原発周辺市町村が作成しているが、実現性が乏しく極めて不十分なものだ。大地震・大津波、豪雨、台風、火山噴火などの自然災害と重なれば、避難すること自体が危険になる。輸送用のバスは確保されていない。要支援者などの災害弱者は取り残される恐れが高い。5km圏内の住民が逃げる間、5〜30km圏の住民は屋内待機し、その後に避難を始めるという二段階避難も非現実的だ。本来、法を整備し多重防護の第5層として規制委員会が計画を審査・検証しなければならないが、責任体制は不明確なまま放置されている。

 第2は、新規制基準に適合したから安全、とは言えないことだ。既存の原発の本体を改造しなくても、外付けの設備や移動式の発電機など可搬式設備を追加すれば合格するようになっている。それらを用いて、ごく短時間に労働者の応急作業で過酷事故に対処できるのか、信頼性に欠けている。たとえば最新のヨーロッパの原発の標準設計は、メルトダウンした核燃料を貯めて冷やすコアキャッチャーや航空機落下に備えた二重ドームを備えていることと比較すると、新規制基準は世界最高といえるレベルには遠く及ばない。

 第3は、自然災害の予測が難しいことだ。川内原発の周辺に五つのカルデラ火山があり、大規模な噴火の影響が懸念されている。規制委員会が2014年に開いた2回の会合で、すべての火山専門家が「現在の学問水準では、活動可能性が十分に低いとは言えないし、モニタリングで有効な危険予知は出来ない」と述べた。全国20か所足らずの原発のうち四つで、基準を超える地震動が10年足らずのうちに5回も到来しており、地震予測の信頼性にも疑いがある。

 川内原発の審査書案に対するパブリックコメント(意見募集)には、昨年夏に1か月という短い期間にもかかわらず約17,000件余の意見が寄せられた。それらに対して規制委員会は考え方を示したものの、その中身は真摯な回答からはほど遠く、まとめられた最終案に市民の意見は議論の対象としては取り上げられていない。そして各種世論調査で一貫して70%前後の人びとが脱原発を望んでいるのに、積極的な合意形成の手続き(地元における公聴会など)を誠実に行わないまま政府や事業者が再稼働に突入していく姿は、福島事故以前の原発推進政策から一歩も進化していない。

リンク:
原子力市民委員会「川内原発審査書案に対する総合的意見」(2014年8月4日)pdficon_s
原子力市民委員会「年次報告2015 原子力発電復活政策の現状と今後の展望」(2015年6月8日)pdficon_s