「原発ゼロ社会への道」 -原子力市民委員会のブログ-

住民の声を無視した避難指示解除の押しつけ 〔原子力市民委員会〕

住民の声を無視した避難指示解除の押しつけ 〔原子力市民委員会〕


 政府の原子力災害対策本部は8月7日、東京電力福島第一原発事故で福島県楢葉町全域に出していた避難指示を、9月5日午前0時に解除することを決めた。楢葉町は約2700世帯で人口約7400人。全町が避難対象となった自治体の解除は初めてとなる。

 避難生活に伴う東電からの慰謝料は、避難指示の解除から一定期間後に打ち切られる。このため解除は実質的には帰還を強いる兵糧攻めとなる。これまで解除された地域と同様に、解除に反対、もしくは時期尚早とする住民は多かった。楢葉町では、水源となる木戸ダムの湖底に高濃度の放射性物質を含む泥があり、町議会が湖底の浚渫(しゅんせつ)を求めていたが、政府はこれには応じなかった。

 政府の進める強引な帰還政策(表参照)に対して、被災住民の側から提訴やADR(法廷外調停)の集団申立てが相次いでおり、政府の指示通りに帰還する住民は限られている。昨年12月に特定避難勧奨地点が解除された南相馬市の住民132世帯534人は、政府の指定解除は違法だとして、解除取り消しと慰謝料を求めて今年4月、東京地裁に提訴した。年間20ミリシーベルトという政府が定めた避難解除基準が果たして妥当なのか、その正当性を問う初の訴訟となる。

 南相馬市の特定避難勧奨地点では、解除前の昨年11月、住民による解除反対署名を1210筆提出し、12月に開かれた住民向け説明会では、発言した住民がすべて反対していた。対象となる地域の一つ、大谷地区の行政区長は「地域全体を下げてから解除でしょう。同じ人間として話をしてほしい。無理を通して道理を引っ込めるのか」と詰め寄った。しかし高木陽介経済産業副大臣(原子力災害現地対策本部長)は「川内や伊達との公平性を保つ」「積算線量20ミリシーベルトを下回っており、健康への影響は考えられない」と述べ、その一週間後に解除を一方的に通知した。伊達市小国地区の特定避難勧奨地点の解除の際には、説明会すら開かれなかった。

 原子力安全委員会は、2011年8月4日の文書「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故における緊急防護措置の解除に関する考え方について」において、「緊急防護措置を解除し、適切な管理や除染・改善措置等の新たな防護措置の計画を立案する際には、関連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築し、適切に運用すること」と定めている。ICRP Pub.103 (2007年勧告)でも、放射線防護に関する意思決定のプロセスに、利害関係者(住民はその最たるものだろう)の関与を求めている。しかし政府はこれらの勧告を無視したままだ。

これまでに解除された避難指示・避難勧奨

リンク:
原子力市民委員会「年次報告2015 原子力発電復活政策の現状と今後の展望」(2015年6月8日)pdficon_s

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脱原発社会の構築のための情報収集、分析および政策提言を行うとともに、幅広い意見を持つ人々による議論の「場」を提供することを目的とした市民シンクタンク。2013年から約60名のメンバー(研究者、技術者、弁護士、経営者、教育者、NGO/NPO職員など)で活動しています。http://www.ccnejapan.com/