焼却による減容化の安全性 〔原子力市民委員会〕

焼却による減容化の安全性 〔原子力市民委員会〕

 原発事故で汚染された稲わらや下水の汚泥などを燃やす仮設焼却施設が、福島県内の各地で稼働しています※1。1月には飯館村蕨平で1日240トン処理できる施設が稼働(故障で4月から停止中)したほか、田村市と川内村にまたがる施設や、楢葉町などでも計画が進んでいます。一方、二本松市に環境省が計画している施設は地元の強い反対で宙に浮いたままです。焼却の安全性は実証されていないので、燃やして廃棄物の容積を減らす「減容化」は極力避けるべきだと、原子力市民委員会は考えています。

 焼却によって焼却施設周辺に放射性物質を再び拡散させてしまう危険性を住民は心配しています。環境省は実証実験をして「排ガスを処理するバグフィルターによる放射性セシウム除去率が99.99%だった」と主張しています。しかし、この実験に対して各地の住民運動から様々な疑問が出されています。例えば実験の装備ではセシウムを完全には捉えられないこと、サンプリングはベスト条件でのたった4時間しか行われていないこと、バグフィルターの様式はメーカーごとに異なっているのに全ての試験はされていないことなどです。国(環境省)は、これらの疑問に答えるための実験を、高感度のモニタリングシステムによる常時監視・常時公開体制のもとで改めて実施すべきです。

 福島県鮫川村で建設された実証実験炉は2013年8月に爆発事故を起こしましたが、住民からの情報公開請求に対して調査報告書類が大部分黒塗りで開示されるなど、秘密主義がはびこっています。また、これは仮設炉ではありませんが、5月には郡山市で木くずなどを燃やしている産業廃棄物焼却施設で指定廃棄物の灰保管庫で火災が発生しました。このときも近隣住民への注意喚起はなく、不十分なモニタリングしか行われていません。

 焼却に代わる方法として、圧縮して耐水性耐腐食性容器に入れ、厚さ30cm以上のコンクリート製箱型暗渠に収納するか、コンクリート固化後に金属製容器(キャスク)に入れて保管するべきです。ただし、かさばる牧草やシイタケ原木などの農業資材については、周辺を汚染しないように場所を限定し、精度の高い排ガス常時モニタリングをしながら慎重に焼却減容することも検討する必要があるでしょう。

 汚染地域では除染廃棄物や汚染農業資材、汚染木材などが、どんどん燃やされ始めています。保管場所の選定や施設整備は急がなければなりません。その際、核廃棄物管理・処分の原則から、処理する場は拡散させず集中させた方が良いので、都道府県単位で処理する方針は望ましくないと考えられます。いずれにせよ処理方法や保管場所の選定や決定には、民主的な住民参加と合意を得るためのプロセスが不可欠です。


※1 福島県内で仮設炉16基で焼却が実施され、うち5基は稼働終了。残り11基が稼働中。10基が建設中・計画中(2015年7月13日現在)。
 放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会(http://gomif.blog.fc2.com)および環境省「放射性物質汚染廃棄物処理情報サイト」の「福島県に
 おける取り組み」(http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima)を参照。

※画像:稼働中の富岡町の仮設焼却炉。(撮影:原子力市民委員会事務局、2016年3月)