原子力市民委員会は、特別レポート「『人間の復興』に必要な医療と健康支援とは?〜原発事故5年、いま求められていること〜」(全46ページ)を11月23日に発行しました※1。6月のシンポジウム※2での3人の講演と、パネルディスカッションの内容を増補改訂してまとめています。政府や地元自治体は、何が起きているか調べない、わかっていることを知らせない、そして助けてくれない。そんな厳しい状況に置かれたままの被災者の姿が浮かび上がります。
さがみ生協病院(神奈川県相模原市)の牛山元美・内科部長は、「臨床医から見たフクシマ」のテーマで講演。ベラルーシで小児科医に話を聞いたり、研修を受けたりした経験も踏まえ、「臨床医としては、とにかく症状を訴える人の話を聞かないと、真実を見逃してしまうかもしれない、臨床医が目と耳を塞いだら最後だ」「甲状腺がんが出てくるかもしれないが、早く見つかれば軽い治療で完治する可能性が高い。そういう話をどんどん広げていかなくてはいけない」などと話しました。
清水奈名子・宇都宮大学国際学部准教授は、環境省が汚染状況重点調査地域に指定した栃木県北部の様子などを、子どもたちの保護者へのアンケートや、聞き取り調査の結果を踏まえて紹介。「福島県以外の被害は認知されず、被災者がいるのに見えないという問題が起こっている」「汚染の問題や、不安な気持ちについて自由に話すことが出来ないという声を多く聞いてきた。実害なのに話すことができず、認識されないという状況は今でも続いている」と指摘しました。
OurPlanet-TVの白石草さんは、「本来はチェルノブイリのような包括的な健康管理、健康診断が必要なのに、日本では、なかなかできない状況だ。事故から30年経過しても0.5mSv以上の地域で健診しているウクライナと比較すると、いかにウクライナが貧しい中で頑張っているかよくわかる」「小児甲状腺がんと事故の因果関係を認めさせるために、情報を出させるということを今こそやらなければいけない」と話しました。
パネルディスカッションでは、「確かな根拠を提示するには大変な労力を要しそれが出来ていないために黙っている状況」「科学的にまだ証明されていないからと言って、証明されるまで待てというのでは、口に出せない不安がかえって募る」「そういう不安を起こすことが健康影響のマイナスになるという議論を、論駁しなければいけない」などの意見が出されました。
講演やパネルディスカッションの内容は、特別レポートで詳しく紹介しています。
※1. http://www.ccnejapan.com/?p=7353
※2. http://www.ccnejapan.com/?p=6920
なお、本レポートの冊子版(A4 判並製 カラー刷り 42頁)は、1冊500円(送料込み)でご送付いたします。
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