【連載】『原発ゼロ社会への道 2017』論点紹介 第16回
第1章 東電福島原発事故の被害と根本問題
テーマ4: 被災者のための法整備とは?
4-5.放射性物質を規制する法的枠組みの現在―2
(p.76)
前回の記事では、環境基本法の「適用除外規定」が削除されたにもかかわらず、放射性物質は相変わらず排出基準や違反した場合の罰則基準などが規定されないまま今日まで来ていることについて述べた。
実際には、福島原発事故由来の放射能汚染物質のみに対する法律が新たに作られた。しかしこの法律は、放射性物質を規制し厳格に管理するというよりは、原子力関連法で定められた基準(クリアランス基準)を大幅に緩和するものであった。その法律は、2011年8月に定められた、放射性物質汚染対処特別措置法である。
そもそも2005年に原子炉等規制法が改正され、100ベクレル/kgという基準が定められ、これを上回る物質は厳重な保管管理をしなくてはならない一方で、これを下回る低レベルの放射能汚染物質に関しては、非汚染物質として取り扱うことが可能になった。
しかし放射線物質汚染対処特措法は、この値の80倍にあたる8,000ベクレル/kgを基準として、それを上回る物質を指定廃棄物として処理や保管に制限を加える一方で、下回る物質は通常廃棄物として取り扱ってよいとしたのである※1。
この基準が適応されるのは福島原発事故に由来する放射能汚染物質であり、それ以外の放射性物質に関しては、原子力等規制法の定める、従来通りの100ベクレル/kgという基準が適応される。つまり、この法律によって、放射能汚染物質に対する規制は、ダブルスタンダードとなったのである。
それだけでなく、除染廃棄物や土壌が、現在仮置き場や仮仮置き場に溢れかえっている一方で、それらを最終的に搬入するはずの中間貯蔵施設は30年後の県外搬出を約束しているため、環境省は汚染土の再利用方針を出している。彼らの目論見では、現在8000ベクレル/kgを超えていても30年後には下回るであろう分量を予測すると、現在の汚染土のうち99%は、再利用されうるとしている※2。
原子力市民委員会は、2018年10月28日に「第21回 原子力市民委員会 ~いま核廃棄物の管理・処分のあり方を考える~ 3.11後の放射性廃棄物・除染土等の扱いから見る『なし崩し政策』」と題して、放射性廃棄物や除染土の再利用に関する会合を開催した。ホームーページに配布資料や当日の様子を撮影した動画を掲載しているので、見ていただけたら幸いである。
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